青森地方裁判所 昭和39年(行ウ)12号 決定 1967年6月02日
申立人 清水リツヱ
主文
本件受継の申立を却下する。
理由
一、原告清水粂次郎の相続人清水リツヱ(以下本件申立人という。)の受継申立の要旨は、頭書当事者間の当庁昭和三九年(行ウ)第一二号法律関係不存在確認請求事件につき、原告清水粂次郎は昭和四二年三月一日死亡し、訴訟手続が中断したので、同原告の妻でその相続人である本件申立人において訴訟手続を受継するため本件申立に及んだ、というにある。
二、そこで、判断するに、本件申立人提出の戸籍謄本によれば、原告清水粂次郎が昭和四二年三月一日死亡したこと、本件申立人が同原告の妻であつてその相続人であることがそれぞれ認められる。
そして、前記訴は、同原告らが地方自治法第二四二条の二第一項第四号の規定にもとづいて、普通地方公共団体の住民たる資格において当該普通地方公共団体たる青森市を被告として法律関係不存在確認、原状回復を訴求していたいわゆる住民訴訟で、同訴訟は昭和四一年一二月二二日口頭弁論が終結され、右訴を不適法として却下する旨の判決が昭和四二年三月二八日言渡されたことは、いずれも当裁判所に顕著な事実である。
してみると、原告清水粂次郎の死亡は、右訴訟の口頭弁論終結後でしかも判決言渡前であることが明らかである。
ところで、地方自治法第二四二条の二が規定するいわゆる住民訴訟は、住民の手により地方財政の公正な運営を確保すると同時に、住民の地方自治関与の拡充を目的として、当該地方公共団体の実体をなす住民に対し特に与えられた公法上の権利であつて、住民各個の個人的利益のためというよりは住民全体の利益を図る公益的なもので、普通の民事訴訟のように私権保護のためでないという性質を有するものであるから、その帰属についても、行使についても一身専属的なものであつて、同訴訟を提起した原告の死亡による訴訟上の地位は相続はもちろんのことその他の事由によつても承継を許さないものと解するのが相当である。
よつて、本件受継の申立は前示のとおり不適法であるから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 秋吉稔弘 辻忠雄 宮沢建治)